呉竹荘グループは1948年の創業以来、全国でホテル・レストラン・ブライダルなどの多様なホスピタリティ事業を展開してきました。グループ全体として「関わる全ての人々のライフスタイルを豊かにし、幸せに貢献し続け、平和で豊かな社会を追求する」ことを目指しています。
コロナ禍による旅行需要の変化を受けて、2022年に元宴会場を活用したセントラルキッチンを新設。同時に超高速凍結機「ZERO-03」を導入し、調理の効率化と品質維持の両立を図っています。今回は、呉竹荘グループの宿泊施設向け食品を調理する株式会社KTSアソシエーション(静岡県浜松市)の日本料理料理長、淺田恵一氏に、凍結機導入の経緯や今後の目標などについてお話を伺いました。
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──事業内容を教えていただけますか。
私たちKTSアソシエーションは呉竹荘グループの一員として、グループホテルや宿泊施設に提供する食品の大量調理と供給を担うセントラルキッチンを運営しています。大量調理に踏み切ったきっかけは、コロナ禍でした。旅客減少によりホテルは大きな打撃を受け、新たな取り組みが必要だと痛感しました。グループ全体で効率化を図りつつ、同じ品質と味を安定して提供できるよう、大量調理と徹底した品質管理を目指しました。そこで、宴会場として使われていたスペースをセントラルキッチンに改装し、さまざまな機材を導入した経緯があります。
── 「ZERO-03」を導入した決め手は何でしょうか。
大量調理を効率的に行い、品質と食感を損なわずに各施設に供給するには、従来の冷凍庫だけでは不十分でした。そのため、セントラルキッチンの立ち上げとほぼ同時期にZERO-03を導入しました。サンプルで提供を受けた天ぷらや寿司の風味を確認し、短時間の凍結で鮮度や食感を保てる点に魅力を感じました。
導入後は、食材ごとに凍結後の状態を半年以上かけて研究し、「これは向いている、これは違う」と試行錯誤しながら、凍結調理のプロセスを確立してきました。今では、各ホテルの朝食・夕食の味に、超高速凍結機の存在が欠かせません。
── 導入のメリットを詳しく教えてください。
メリットは「高い品質」と「凍結スピード」です。鮮魚や青物野菜も色と食感が保たれ、おいしい状態で提供できます。以前は通常の冷凍庫で1~2日かかっていた凍結も、今は30分程度で完了するため、大幅に効率化されました。
1キロパックは、1時間あたり80~100個単位で凍結できます。現在は、午前中に調理と味付けを済ませて午後から凍結する業務フローを確立しました。導入当初の目標だった月間3000~4000パックの生産も順調に達成し、現在では6000パックの製造も可能になりました。また、大量調理した冷凍品を卸すことでホテル毎の味のバラつきが減り、「呉竹荘の味」をグループ全体で実現できています。
── 超高速凍結機の導入に際して、ハードルはありましたか。
初めての超高速凍結機導入だったので、正直、最初は機械の扱い方やメンテナンス、食材ごとの最適な凍結条件の見極めが必要でした。根菜類や加熱して食感が変わる野菜は課題が残りました。一方で、切り干し大根やミートボールのトマト煮などは冷凍後も食感や味がしっかり保てるため、メニューに組み込むことができました。
また、凍結機からパックを出し入れする工程の改善ニーズなど、導入後も現場の声を伝え、ゼロカラさんと一緒に細かな機材のカスタマイズやメンテナンスを重ねてきました。パートスタッフの方にも分かりやすく扱えるよう、使い方やタイマーの活用について共有し、今ではスムーズに運用できています。
──超高速凍結をした食材やお料理について、顧客からの反応はいかがでしたか。
料理の味については、多くのお客様からご好評をいただいています。加えて、従来難しかった旬の食材のストックも可能になりました。例えば、浜松市ではブランドとうもろこし「甘々娘(かんかんむすめ)」が有名です。6〜7月の出荷最盛期に一括で仕入れ、瞬間冷凍したものを8月のイベントで提供したところ、好評でした。旬そのままの甘み・香り・食感で提供できる期間が広がりました。
── 今後のビジネスにおいて、超高速凍結機を活用した展望があれば教えてください。
グループホテルだけでなく、地元病院の人間ドック向け弁当などにも活用は広がっており、大量生産・高品質を両立できる機材として重宝しています。今後も冷凍技術を軸に、「どこで食べても呉竹荘の味」というブランドを追求し、私たちが提供する食の価値をより多くのお客様に届けたいと考えています。
この記事を書いた専門家(アドバイザー)
著者情報 ゼロカラ凍結研究Lab CFG
「ゼロカラ作る」を楽しむ超高速凍結機メーカーのゼロカラ。 "できないができる!"アイディアと凍結技術を融合させるシェフという立場で、新たな美食体験を創り凍結研究情報を発信します。
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