年末のギフトや年明けに家族で食卓を囲むときによく出てくるカニですが、正しい解凍法をご存じですか?間違った解凍方法を使うと、本来のおいしさが損なわれ、風味や味わいも変わってしまいます。
本記事では、冷凍カニをおいしく解凍する方法やポイントを紹介します。
解凍時の注意点や、余った殻の活用法についても紹介しているのでぜひ参考にしてください。
目次
冷凍カニには「生」と「ボイル」の2種類があります。見分け方としては、殻が茶色になっているものが生で、赤くなっているものがボイルです。
カニの体内には80%の水分が含まれており、解凍法によって味や風味が大きく変わる繊細な食材となっています。ここでは、生の場合とボイルの場合に分けてそれぞれ解凍法や解凍時のポイントについて紹介します。
生の冷凍カニは水揚げしてからすぐに冷凍したもので、一度も火を通していない新鮮さが特徴です。長時間でじっくり解凍してしまうと、カニの品質が徐々に悪くなりやすくなるので
短時間で解凍するようにしましょう。
短時間で解凍する方法としては「流水解凍」と「氷水解凍」の2つがあります。
流水解凍は、冷凍庫から袋ごとカニを取り出し、深めのボウルやバットに入れ水を流し続けて解凍させる方法です。解凍時間は形や大きさによって異なりますが、およそ30分から1時間が目安となっています。
氷水解凍は、カニを袋ごと氷水につけて時間をかけて解凍する方法です。解凍時間は1時間から1時間半ほどと、流水解凍より時間はかかりますが、0度を保ちながら解凍するので、鮮度を維持しながら解凍できます。
生のカニをおいしく解凍するポイントは以下の4点です。
では、順番に解説します。
生のカニは解凍すると劣化するスピードがとても早く、時間がたつと黒く変色してきます。変色の原因は、カニの中のタンパク質が酸化してできたメラニン色素によるものです。
変色したものを食べても問題はありませんが、見た目が悪いのと味が落ちてしまうので、解凍する量はその日のうちに食べる分、または翌日までに食べる分までにしておきましょう。
生カニを加熱せずそのまま食べてしまうと、食中毒の危険があります。どのような衛生環境で梱包されているのか、カニを見ただけでは必ずしも安全とは判断できないため、生食はあまりおすすめできません。
そのため、パッケージに「刺し身用」や「生食用」と表記されていなければ、生で食べずに必ず加熱調理するようにしましょう。
生カニの風味が最も味わえる解凍状態は半解凍くらいといわれています。目安としては外側が溶け、中心のみが凍って硬いままの状態で水気を切って調理するのがおすすめです。
また、カニの身と殻では解凍時間が違うので、殻に付着している氷が手で外せるようになったら取り除いておくと、均一に解凍できます。
ボイル済みのカニはあらかじめ塩茹でされているものがほとんどですが、まれに塩がついている状態の生カニもあります。
これは濃い塩水に漬け込んで急速冷凍する「ブライン冷凍」という技術の冷凍法を用いたもので、細胞破壊を抑えることができるのが特徴です。ドリップの流出や、凍結ムラを起こさずに冷凍できるので解凍後でも鮮度を保ち、おいしくいただけます。
味見をしてみて塩気が濃い場合は薄い塩水で塩抜きをすると、浸透圧の影響でうま味を逃さず塩気だけを抜けるうえ、食べる直前の10分程度でもできるのでおすすめです。
ボイルが済んでいるカニの解凍方法は、生カニと違いじっくりと時間をかけて解凍するようにしましょう。時間をかけずに解凍してしまうと、水分と共にうま味成分や栄養素が溶けでてしまうので、冷蔵庫内で半日から1日じっくりと時間をかけるとおいしく解凍できます。
ボイル済みのカニをおいしく解凍するポイントは以下の4点です。
では、順番に解説します。
通販で購入するカニは、基本的に発泡スチロールで梱包されて届くものが多いです。発泡スチロールの状態で冷蔵庫に入れて解凍をしてしまうと、発泡スチロールの匂いがカニに付着する可能性があります。
そのため、解凍する時には中身だけ取り出し、バットなどに乗せたり、新聞紙やキッチンペーパーでカニを包んでから、ビニール袋に入れたりして解凍するようにしましょう。
ボイル済みの冷凍カニは、冷凍時に「グレース処理」という方法が用いられています。グレース処理は、冷凍時にカニの表面を氷で覆って空気に触れる部分を減らし、カニの品質を保持する効果が特徴です。
解凍時には、この表面の氷の膜が大量の水分として流れ出ます。その際にカニが水に濡れないようにバットなど、深い陽気にビニールごと入れて解凍するようにしましょう。
生のカニ同様、加熱済みのカニも完全に解凍してしまうと、水分とともにうま味成分も溶け出してしまいます。目安としては8割解凍を意識し、殻についた氷が手で剥がせるようになれば食べ頃です。
また甲羅付きのカニの場合は、おなかを上にすると解凍時にカニ味噌がこぼれずに済むのでおすすめです。
ボイル済みの冷凍カニは、水揚げしてからすぐに塩茹でされている状態で冷凍しているため、カニのうま味や甘味がしっかりと残っているので、加熱調理しなくてもおいしく味わえます。
特にギフトでもらったカニの場合、職人の手によって絶妙な加減で火入れされているため、普段家で加熱するものとは違った味わいが楽しめるのも、ボイル済みならではの特徴です。
ボイル済みのカニをさらに加熱してしまうと、身がパサついて風味もとんでしまうので、そのまま食べるようにしましょう。
カニは生と加熱済みによって解凍方法が異なりますが、間違った解凍方法や保存をしてしまうと、カニの本来の品質を損なう可能性があります。
カニの解凍において注意したい点は以下の3点です。
では、順番に解説します。
通常、冷凍カニは解凍の際に凍っていたうま味が水分と共に流れ出てしまいますが、低温でじっくり解凍することで、うま味が再びカニの身に染み込み茹でたてに近いおいしさになります。
電子レンジで解凍してしまうと、カニ内部のうま味がそのまま外へ流れ出し、身がパサつくうえ風味も失われます。さらにグレーズ解凍の氷も表面に溶け出てしまい、匂いの原因にもなるので注意しましょう。
また、電子レンジは固体よりも液体に強く反応する性質があるので、大きさや凹凸がある箇所や、溶け出している箇所があるとその部分のみが強く加熱される加熱ムラが生じます。
常温解凍もカニの解凍温度には適さず、そのままにしているとカニの細胞が壊れやすくなり、ドリップやうま味が外に流れ出る原因にもなります。
そのため、電子レンジ解凍や常温解凍は使わず、庫内解凍や流水解凍を利用するようにしましょう。
カニの解凍は生カニなら8割、ボイル済みなら半分が理想ですが、冷凍したものをそのまま蒸したり、茹でたりと加熱してしまうと、電子レンジ同様、急速に加熱が進み、うま味がお湯や外に流れ出てしまいます。
栄養やうま味を逃さずに調理したい場合は、半解凍まで冷蔵庫で解凍してから調理するのがおすすめです。また焼きカニだけは例外となっており、完全に解凍してから使うようにしましょう。
冷凍されているカニは、専用の機械で急速に冷凍することで細胞を破壊せずに鮮度を保っていますが、解凍後のカニを再び冷凍してしまうと、品質が劣化しおいしくなくなります。
基本的に解凍後のカニの日持ちは2日が目安となっており、それ以上経過してしまうと、風味が落ちたり、身がパサついたりします。
そのため、解凍する際には必要な分のみ解凍し、それでも余ってしまった場合は日持ちするように、ほかの料理の具材にアレンジして持たせるようにしましょう。
冷蔵庫で保存する場合は、ラップで包み乾燥を防止するのがおすすめです。
えびの殻で出汁が取れるように、カニの殻も有効活用ができます。カニの殻の再利用方法は「殻で出汁をとる」方法と「土の肥料にする」方法の2つです。
殻で出汁をとる場合、使い終わったカニの殻を細かく刻み、ネギや生姜と炒めます。炒めたものを鍋に移して水と一緒に30分ほど煮込み、その後ペーパーや網で越したらカニ汁の完成です。カニのうま味がしみ出し、味噌汁やお吸い物におすすめです。
炒める際に料理酒や白ワインを加えることで、風味がより豊かになります。
肥料にする場合は、殻をよく洗い外で天日干しします。乾いたら砕いて土と一緒に混ぜ合わせます。
カニなどの甲殻類の殻はキトサンやミネラル、手術用糸の原料となるキチン質が豊富に含まれており、土の中にいる有用微生物の働きを活性化させる効果が特徴です。その結果、病害虫や多雨による土壌の有効成分の流出防止にも役立ちます。
育てる野菜のうま味や草花のツヤがつく効果も期待できるので、家庭菜園やガーデニングをしている方におすすめです。
まとめ
今回は、冷凍カニのおいしい食べ方や解凍方法について紹介してきました。冷凍カニは生やボイルによって解凍方法が異なりますが、どちらとも時間をかけて解凍するようにしましょう。
激しい温度変化による解凍はカニ本来の味や風味を損なう可能性があるので、適切な解凍方法でおいしいカニを存分に楽しんでください。
この記事を書いた専門家(アドバイザー)
著者情報 ゼロカラ編集部
超高速凍結機、急速凍結機、液体凍結機、ナトリウム除去装置、凍結製造ライン設計の株式会社ゼロカラ
関連記事