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トップ冷凍コラム【氷曲げ】進化する管楽器の曲げ加工

冷凍コラム

2024.09.17

【氷曲げ】進化する管楽器の曲げ加工

楽器の製造には、非常に高い精密さと繊細さが求められます。その中で、特に重要な技術の一つが金属の曲げ加工です。

 

中でも注目されているのが「氷曲げ」と呼ばれる技法です。金属を氷で冷却しながら曲げることで、作業者への負担や環境負荷が少なく精密で歪みの少ない加工が可能になります。

 

本記事では、冷凍技術に強みを持つゼロカラが、この「氷曲げ」技術についてご紹介します。

管楽器の曲げ加工における課題

 

管楽器の製造において、配管の曲げ加工は非常に重要な工程ですが、そこにはいくつかの課題があります。通常の配管曲げは、中が空洞のまま曲げる方法ですが、管楽器に求められる管板厚と曲げRの関係が厳しい為、管の円形が潰れ、偏平率が高くなってしまいます。この偏平率の増加は、音の品質や音程に直接影響を与え、楽器としての性能を損ねる原因となります。そのため、曲げ加工を行う際には、内部に詰め物をして潰れを防ぐ技術が必要とされてきました。

 

配管内部に詰め物をして曲げる方法には、砂、低融点合金(鉛)、溶融塩、水(氷)などを用いるいくつかの手法があります。

 

砂を用いた曲げ加工の課題

 

砂を用いた方法は、内部に砂を満たすことで管の変形を防ぎますが、使用する砂の量が非常に多くなるため、作業中に砂が舞い散り、作業環境を悪化させる問題があります。作業者が風塵を吸い込むことで健康に悪影響を及ぼす懸念も指摘されています。

 

鉛を用いた曲げ加工の課題

 

一方、鉛を使う方法は、鉛の曲げやすさと硬さで変形を防ぎますが、鉛は人体に有害な物質であり、特に直接口を付ける楽器の製造には不向きです。このように、従来の手法にはそれぞれの課題が存在しました。

 

氷曲げにより精度と安全性の両立が可能に

 

これらの課題を克服するために、「氷曲げ」という技術が登場した経緯があります。この方法では、配管内部に水を注入し、凍らせた後に曲げ加工を行います。水を凍らせることで、管の内部を均等に支え、潰れを防ぐとともに、偏平率を低く抑えることが可能です。また、砂や鉛と違って作業環境を汚染することなく、健康へのリスクも低減できます。

 

しかし、氷曲げには新たな課題もあります。水を凍らせる工程が必要であるため、加工工程に移行する前に急速に水を氷らせることができる凍結機が必要かつ、氷の温度も-35℃付近でないと偏平率が悪いことから、-35℃まで急速に凍結させることが出来る凍結機が必要であるということです。

進化する氷曲げ技術

氷曲げ技術も進化を続けていますが、その中で使用される手法にはさまざまな特長と課題があります。

 

例えば、氷曲げ技術の中でもフッ化溶剤や液体窒素を使用した装置は、ランニングコストが高くなるという問題があります。また、空気を使って凍結する装置は、コストを抑えられる一方で、凍結スピードが遅く、生産効率が悪いというデメリットがありました。

 

その中で注目されているのが、アルコールブライン液を用いた凍結方法です。この方法は凍結スピードが速く、ランニングコストも比較的低く抑えられるという利点があります。しかし、従来の方式では高濃度のアルコール(60wt%以上)が必要で消防法上危険物として適用を受けるため、消防への許可申請や防爆設備の設置等が必要であるのに加え、濃度の管理に手間がかかる欠点がありました。

 

ゼロカラ社が開発した新技術では、-40℃のアルコールブライン液を自動で水位と濃度を調整できる装置を導入することで、従来の保守管理にかかる手間を大幅に軽減し、ランニングコストを抑えながら迅速な凍結を実現しています。

 

この技術の進化により、電気代とブライン費用のみで運用が可能となり、フッ素系溶剤や液体窒素を使用した場合と比較して、月額100万円以上かかっていたランニングコストを9割以上削減できるというシミュレーション結果が得られています。これにより、凍結のスピードが向上し、費用対効果も大幅に高まります。

 

氷曲げ技術はより効率的で使いやすいものとなり、今後の管楽器製造においても重要な役割を果たすことが期待されています。

氷曲げ技術の新たな活用シーン

 

氷曲げ技術は、管楽器製造において重要な役割を果たしているだけでなく、他の製品にも幅広く応用できる可能性を秘めています。特に、精度の高い曲げ加工が求められる製品には、この技術が非常に有効です。

 

自動車や二輪車のマフラー

 

 

自動車や二輪車のマフラーは氷曲げ技術の代表的な応用例です。マフラーの形状や曲げの精度は、音の吸収率や排気効率に直接影響を与えるため、高度な曲げ加工技術が求められます。氷曲げ技術を活用することで、マフラーの製造においても高精度な曲げ加工が可能となり、製品の品質向上が期待できます。

 

また、急速凍結機の導入により、これまで手間がかかっていた凍結工程を効率化し、量産が容易になるというメリットもあります。従来の手法では、凍結に時間がかかるため、大量生産が難しいとされていました。しかし、急速凍結機を用いることで、短時間での凍結が可能となり、生産スピードが飛躍的に向上します。さらに、自動化された濃度調整機能などの新技術により、作業者の負担が減り、ランニングコストの削減にもつながります。

 

このような技術革新により、氷曲げ技術は管楽器だけでなく、車両部品やその他の精密機器の製造にも新たな可能性を広げています。

 

氷の曲げ加工に使用する急速凍結機のご依頼なら

 

氷を利用した曲げ加工技術の導入をお考えなら、ぜひゼロカラにご相談ください。私たちは、最新の技術と知識でお客様のニーズにお応えします。高精度な曲げ加工が求められる管楽器の製造だけでなく、他の製品にも応用可能な急速凍結技術を提供します。

 

また、貴社の特定の要件や仕様に合わせて、製品のカスタマイズにも対応しております。製造効率を向上させながら、コスト削減も実現できるよう、最適なソリューションを提案いたします。氷曲げ技術の導入をお考えの方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。

この記事を書いた専門家(アドバイザー)

著者情報 ゼロカラ編集部

超高速凍結機、急速凍結機、液体凍結機、ナトリウム除去装置、凍結製造ライン設計の株式会社ゼロカラ

特許取得済み

“世界最速”の凍結スピード

はゼロカラ

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