デリバリーやテイクアウトサービスが増え、店内メニューを冷凍食品として製造、販売する飲食店が増えてきました。
近頃は、個人の方が調理したケーキやクッキーなどもECサイトや専用のプラットフォームで販売しているのも見かけます。
しかし、冷凍食品として商品を製造、販売するには、営業許可や届出が必要です。
今回は冷凍食品の販売許可を得るために必要な要件や定義について、詳しく解説します。
目次
冷凍食品を製造し、販売許可を得るにはまず、必要な許可申請と届出について知っておくことが重要です。
ここからは冷凍食品の許可や届出について、解説していきます。
冷凍食品を自社で製造、販売するには、食品衛生法に定められている許可や届出を出さなくてはなりません。
申請する許可や届出は、冷凍食品を自ら製造し、販売するのか、製造業者から仕入れて販売のみするのかで異なります。
2021年6月1日に改正された食品衛生法では、次の3つの許可が必要です。
自分で冷凍食品を製造、販売する場合は「冷凍食品製造業の営業許可」または「複合型冷凍食品製造業の営業許可」を得る必要があります。
冷凍食品製造業の営業許可は、半加工品などのお惣菜を冷凍食品として製造する場合に必要な営業許可です。
唐揚げやエビフライといった食肉や、魚介の冷凍食品を製造する場合にも必要になります。
複合型冷凍食品製造業の営業許可は、お肉をカットして調理後に冷凍食品として製造したり、麺類の冷凍食品を製造したりする場合に必要な営業許可です。
これまでの食品衛生法では、食肉処理業などの営業許可も追加で取得しなければなりませんでしたが、改正により複合型冷凍食品製造業の営業許可を取得すれば免除されるようになりました。
また、冷凍食品を製造している業者から仕入れ、自社で小分けにして包装、販売する場合には食品小分け業として所轄の保健所に許可を得る必要があります。
一方、自社で販売するだけであれば、冷凍・冷蔵倉庫業としての届出の提出のみで、営業許可を取得する必要はありません。
冷凍食品の製造や販売許可を得るには、まず食品衛生法に定められているいくつかの条件を満たす必要があります。
営業許可を得るには、次の3つの条件をクリアしなければなりません。
一つずつ確認していきましょう。
冷凍食品の製造・販売には「食品衛生責任者」の資格が必要です。
食品衛生責任者は、飲食店など食品関係の営業を行う際に必要な資格で、保健所が実施している責任者講習の受講が義務付けられています。
受講後に交付される修了証を保健所に届け出ると、晴れて食品衛生責任者の資格が取得できます。
ただし、下記の資格を取得している場合は、保健所に届けるだけで食品衛生責任者の資格を取得できます。
上記の資格は、食品衛生責任者と同等の知識を保有しているとみなされるため、別途講習を受ける必要はありません。
冷凍食品を製造するにあたり、製造・販売する施設基準を満たす必要があります。
基準は都道府県毎に条例で定められていて、共通の項目では営業許可を取得するすべての施設(調理場)で基準を満たさねばなりません。
施設に関する共通項目は自治体によって異なりますが、下記のような基準があります。
共通基準については、最寄りの保健所に相談すると、細かく指導してもらえます。
施設を整備する際は、事前に保健所へ確認しておきましょう。
施設基準のうち、業種ごとに基準を設けているのが特定基準です。
営業許可ごとに特定基準を満たす必要があるため、特別な対策が必要になるケースもあります。
たとえば、冷凍食品製造業、複合型冷凍食品製造業では下記のような特定基準が設けられています。
特定基準も都道府県によって細かく設けられているため、最寄りの担当保健所に確認してみてください。
冷凍食品には基準が定められているため、ただ凍結しただけでは冷凍食品とは認められません。
ここからは冷凍食品の定義や基準について、具体的に解説します。
冷凍食品の定義は、次の4つです。
冷凍食品は製造段階からマイナス18℃以下を保っている食品を指し、0〜10℃程度で販売されているチルド食品とは定義が異なります。
また、同じ冷凍された食品でも、冷凍された魚は冷凍食品には定義されず、あくまでも冷凍魚として扱われています。
冷凍食品は、食べる前に加熱調理が必要かどうかで分類が異なり、細かく4つに分類されています。
食べる前に加熱調理が必要でない冷凍食品の代表例は、ケーキやお弁当用の冷凍食品といった加工品のほかに、生で食べることを目的に凍結された魚介類や果物が挙げられます。
食べる前に加熱調理が必要とされる冷凍食品は、凍結時に加熱されているかどうかで分類が異なり、唐揚げやハンバーグなどは凍結直前加熱済みです。
フライドポテトやコロッケなどの揚げ物類は、未加熱で販売されている商品もあります。
冷凍食品として製造・販売するためには、成分規格と保存基準それぞれをクリアする必要があります。
ここで食品衛生法に定められている成分規格を確認してみましょう。
画像出典:かながわの食品衛生
成分規格は細菌数、大腸菌群、大腸菌(E.coli)、腸炎ビブリオ最確数と、4種類の規格が定められています。
基準値以下の場合、食中毒や腸管系細菌による感染症のリスクが高まるため、製造や販売が禁止されています。
また、下記の2つの保存基準も満たさなければなりません。
冷凍食品はマイナス18℃以下にすると、凍結時の品質がほぼ保てるとされています。
さらに清潔な合成樹脂やアルミニウム箔、耐水性の加工紙であれば、細菌汚染や乾燥といった品質劣化も防げます。
冷凍食品を製造、販売する際、取り扱う商品によって、さまざまな許可や届出が必要です。
また、営業許可を取得後も、製造時や販売時に気をつけなければならない点がいくつもあります。
ここで冷凍食品を製造・販売するときの注意点を3つご紹介します。
冷凍食品を製造、販売する際に取得しなければならない許可や届出は、取り扱う食品や業種によって異なります。
製造業の許可の一例は下記の通りです。
また、販売時にも別の許可が必要になるケースがあります。
たとえば、食肉処理業の許可を得た後に、仕入れた生肉をカットしてミールキットのように販売する場合「食肉販売業」としての許可が必要です。
一方、そうざいの冷凍食品を販売している企業が、包装済みの精肉や鮮魚介類を販売する際は営業届を出せば問題ありません。
取り扱っている商品によっては、新たに営業許可を取得しなくても販売できる可能性もあるため、必要な許可や届出については最寄りの自治体で確認してみてください。
取得した営業許可は、自治体や業種によってそれぞれ更新時期が定められています。
営業許可を取得してから5〜8年程度すると、更新手続きの時期を迎えるため、改めて製造や販売の許可基準に達しているか確認しておきましょう。
更新時は初回の許可申請と同様に、申請書と更新料、基準を満たしているか実地での調査が行われます。
調査や申請内容に問題がなければそのまま更新できますが、普段から衛生面や品質は常に基準を意識して、抜き打ち検査が来ても問題ないようにしておいたほうが安心です。
冷凍食品を製造、販売する際は、必ず食品表示法やJAS法などに基づき、ラベル表示が義務付けられています。
表示する内容は取り扱う商品によって異なり、冷凍食品であれば下記のような表示が求められます。
万が一、ラベル表示をしなかったり、虚偽の表示をしたり、基準に従った表示をしていない場合は、2年以下の懲役または200万円以下の罰金が課せられるリスクもあります。
製造、販売する際に必要なラベル項目については、消費者庁が公表しているガイドラインを確認し、不安であれば最寄りの保健所へ相談してみましょう。
最後に冷凍食品の販売許可でよくある質問をまとめました。
今回は4つ回答しますので、ひとつずつ確認していきましょう。
お店で作った商品を冷凍して通販する場合、取り扱い品目によっては新たに許可や届出が必要です。
たとえば、お惣菜屋さんが新たに焼豚やローストビーフなどを製造、通販するには「食肉製品製造業」として許可を得なければなりません。
また、通販でなくテイクアウトやデリバリーサービスを始める場合も、営業許可が必要になるケースがあります。
令和3年6月1日以前に旧法に基づく飲食店の営業許可を取得している場合は、新法に基づく飲食店営業の許可が必要になるため注意しましょう。
店先に設置して販売できる冷凍自販機は、コロナ流行以降に注目された販売方法です。
冷凍自販機で商品を販売する場合も、冷凍食品製造業や複合型冷凍食品製造業などの許可を得る必要があります。
飲食店営業許可で提供できるのは「短期間のうちに消費されるもの」であり、日持ちを目的に冷凍食品を販売するには各自治体で定められている手続きをしなければなりません。
設置する自販機の機能によって、許可および届出の内容が異なるため、詳しくは最寄りの保健所に相談してみてください。
生の肉や魚、麺など、調理前の食品販売をする場合、新たな営業許可または届出が必要になるケースがあります。
たとえば、ラーメン屋さんが購入後に調理が必要な自家製麺を販売する場合、麺類製造業の営業許可が必要です。
ただし、仕入れた包装済みの精肉や鮮魚介類をそのまま販売するなら、営業届の範囲内です。
販売方法によって必要な営業許可、届出が異なるため、手続き方法に不安があれば事前に保健所に相談しておきましょう。
手作りハンバーグやケーキなど、個人で製造した冷凍食品を販売する場合でも、食材ごとの営業許可および食品衛生責任者と2つの資格が必要です。
また、資格以外にも、食品衛生法に基づき、冷凍食品を製造・販売するための設備を整える必要もあります。
家庭用のキッチンでは、厚生労働省が定めている営業許可の施設基準を満たせないため、個人で冷凍食品を製造するには自宅の改装やリフォームが求められるケースもあるでしょう。
さらに飲食店勤務などですでに営業許可を取得している場合も、個人で冷凍食品を販売する際は別途営業許可が必要です。
個人が冷凍食品を販売するには、さまざま許可や届出、講習会への参加が要件となっているため、販売前に最寄りの保健所に確認しておきましょう。
取り扱う冷凍食品によって、必要な営業許可や届出は異なります。
個人で販売する場合にも、規格基準に則った施設や設備環境を整備しなければなりません。
冷凍食品の施設基準は細かく定められていて、自宅用キッチンや冷凍庫では基準を満たせない可能性があります。
自宅用冷凍庫では凍結スピードが遅く、急速冷凍に向いていないため、できれば業務用の急速凍結機の使用が望ましいです。
たとえば、ゼロカラが提供している超高速凍結機「ZERO-03」は、最大マイナス35℃の液体温度で食品を凍結させます。
凍結スピードが早く、凍結時に結晶を細かくでき、さらにドリップもでにくいため、美味しさを保ったまま冷凍食品が製造できます。
また同じペットボトルの凍結実験では、他社の液冷凍結機よりも約2倍のスピードで凍結できた結果も。
機能面の確認や急速冷凍後の状態、解凍時の風味など、試食してから導入したい方には無料でテストキッチンも利用可能です。
自社や自宅の設備では凍結が難しいとお悩みの方は、ぜひゼロカラのテストキッチンでZERO-03の性能を試してみてください。
この記事を書いた専門家(アドバイザー)
著者情報 ゼロカラ編集部
超高速凍結機、急速凍結機、液体凍結機、ナトリウム除去装置、凍結製造ライン設計の株式会社ゼロカラ
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