家庭用冷凍庫は、冷凍食品や作り置き食材を長期間保管しておける便利な家電です。しかし、食品を長期保管するには、家庭用冷凍庫と業務用冷凍庫でそれぞれ適切な温度が異なるのはご存知ですか?家庭用冷凍庫は日常の作り置き食材や冷凍食品を長期間保存できますが、温度が不適切だと鮮度が落ちてしまいます。
本記事では、家庭用冷凍庫の適切な温度と業務用冷凍庫との違いについて、詳しく解説していきます。
目次
家庭用冷凍庫の適切な温度はJIS規格にて「−18℃」と定められています。−18℃の理由は、食材のなかに潜む微生物が繁殖できなくなるからとされています。
温度 | 説明 |
-10℃以上 | 細菌の増殖が始まり、食中毒の危険性が高まります。 |
-18℃ | 食品の風味や質を損なうことなく、長期保存が可能な適切な温度です。 |
-25℃以下 | 過度に低温のため、食品が凍り付き劣化する恐れがあります。 |
中温細菌である食中毒細菌は、0℃になるとほぼ活動ができなくなります。比較的低温に強い細菌であっても、-10℃以下ではほとんどの細菌が活動を停止します。
また、食材の品質変化に関わる酸化も低温保存すればゆっくりになるため、長期間美味しさと鮮度を保ちながら保存するなら、冷凍するのが理にかなっているわけです。
冷凍食品のパッケージや、家庭用冷凍庫を販売しているメーカーの取り扱い説明書にも、冷凍庫の適温について同様の記載がされているケースが多いでしょう。
家庭用冷凍庫と業務用冷凍庫の大きな違いは、冷却性能です。家庭用はその名の通り、購入してきた食材の冷凍などを行いますが、業務用冷凍庫は冷凍食品の冷凍でよく活用されています。
ここで、具体的な家庭用冷凍庫と業務用冷凍庫の違いについて解説します。
簡単に家庭用冷凍庫と業務用冷凍庫の違いをまとめました。
家庭用冷凍庫 | 業務用冷凍庫 | |
用途 | 家庭内の食材冷凍 | 冷凍食品の生産 |
サイズ | 小さい | 大きい |
容量 | 30〜600L程度 | 40〜1500程度 |
冷却温度 | 弱め | 強め |
耐久性 | 一般的 | 高耐久 |
家庭用冷凍庫は冷蔵室と一緒になっている冷蔵庫タイプが多く、冷凍室のみを計算するとサイズはやや小さめです。業務用冷凍庫は冷凍食品の生産でもよく使われるため、大容量の保存に適しています。
また、業務用冷凍庫は長期かつ低温管理が可能なので、買いだめや大量につくった食品を冷凍も鮮度を保ったまま保存できるでしょう。さらに細かい温度設定や引き出し機能など、便利な機能が充実している製品もあります。
家庭用冷凍庫は−18℃以下が適切とされていますが、業務用冷凍庫はさらに低温設定が出来るようになっています。業務用冷凍庫の場合、-20〜60℃程度に設定できるものが多く、より低い製品だと-80℃まで設定可能です。
業務用冷凍庫が家庭用冷凍庫よりも低温設定にできる理由は、新鮮な食材を流通させるために低温保存と凍結スピードの速さが重要だからです。たとえば、マグロやカツオなどの赤身魚は、メト化と呼ばれる色素タンパク質(ミオグロビン)が酸化すると、暗褐色に変化してしまいます。そのため、冷凍マグロや冷凍カツオを流通させるには、マイナス35℃以下の超低温で保存しなければなりません。
牛肉などのお肉にもミオグロビンは含まれているため、畜産関係者や漁業関係者は業務用の超低温冷凍庫を活用しているケースが多いです。
また、冷凍スピードが早いと食材のなかにできる氷の結晶も小さく、旨味や栄養素が逃げるドリップが逃げにくくなります。特にお肉やお魚は低温保存すると食品が劣化しにくくなるため、急速冷凍機能がついている冷凍庫であれば、より旨味が逃げず、美味しさが維持できるでしょう。
関連記事:急速冷凍とは?瞬間冷凍との違いやメリットについて徹底解説!
業務用冷凍庫には大きく分けて3種類あります。
スライド式冷凍庫 | 本体上部にスライド式の扉があるタイプ。省スペース設置ができる冷凍庫で、庫内の温度管理がしやすいメリットがあります。上に積み重ねていくため、食材が取り出しにくい難点があります。 |
前開き冷凍庫 | 前面に扉がついているタイプ。食材の出し入れがしやすく、何がどこに入っているのか見渡しやすいのがメリットです。ただし、冷気が逃げやすいので温度維持が難しい難点があります。 |
チェスト式冷凍庫 | 上部の扉を開閉するタイプ。冷気が逃げにくく、扉の開閉での温度上昇が少ないメリットがあります。サイズが豊富なので、設置場所や保存量に合わせて選択肢が多いのも特徴です。 |
業務用冷凍庫は種類によって、選べる容量も大きく異なります。どの種類でもコンパクトサイズに対応できる製品はありますが、大容量に対応できるのは前開きタイプかチェスト式です。
また、冷却方法によって冷却効果も異なるため、特徴を押さえておくとよいでしょう。
家庭用冷凍庫も同じく冷却方法によって食材の冷え方や庫内のメンテナンス方法が異なるので、チェックしてみてください。
家庭用冷凍庫の温度設定は低くしているのに、イマイチ温度が下がりきらないときはいくつか原因があります。ここからは、家庭用冷凍庫の温度が下がらない場合に考えられる原因と対処法を5つ解説します。
家庭用冷凍庫はドアの開閉頻度が高いと、庫内の冷気が逃げてしまい、設定温度の維持が難しくなります。特に夏場は冷気が逃げるだけでなく、外気温の影響を受けてドア付近にある食材が溶けやすくなってしまうため、できる限り早く閉めるようにしましょう。
とある事例では、冷凍庫のドアを約15秒開けていただけで庫内の温度が-13℃まで上昇し、-18℃に下がるまで約2分かかったという結果も。また、ドアの開閉回数を減らすと約12%の省エネになった実験もあります。
冷凍庫の開閉頻度が高いと庫内の温度も下がりにくいので、必要な食材を短時間で取り出すようにしましょう。
食材を詰め込みすぎてしまうと冷凍庫内で空気の循環ができず冷却力が低くなるだけでなく、ドアが完全に閉まりきらないケースがあります。ドアが閉まらないと外気温の影響を受け、庫内の温度が上がってしまうでしょう。
下記のような状態は、食材を詰め込み過ぎの目安です。
食材を詰め込みすぎている場合は、中身を適切な量まで整理する必要があります。適切な量がわからない場合は、次の3つを目安にしてみてください。
冷凍庫の中身を整理しても温度が下がらない場合は、ドアパッキンに破れなどがないかも見直してみましょう。ドアパッキンが破損していると冷気が逃げてしまうため、定期的なチェック、メンテナンスも必要です。
家庭用冷凍庫の設置位置が壁に近すぎると、背面や側面の通風口が遮られて冷却効率が下がります。壁と冷凍庫の距離がある程度空いていないと、放熱ができずに冷却力が低下します。
メーカーや製品によって必要なすき間は異なりますが、大体以下のスペースを用意しておくと安心です。
最近の冷凍庫では、背面の放熱スペースが不要な製品もあります。詳しくは取り扱い説明書をご確認ください。
冷凍庫内に霜がついていると冷気の循環が悪くなるため、温度が下がりにくくなるケースがあります。霜はドアの開閉時に、外気が入ることで庫内に結露が起こり、凍ったものです。
霜がつく主な原因は下記の通りです。
特に夏場は霜ができやすく、ドア付近にある食材にうっすら霜がついてしまうことも。霜がつくと冷却力が下がるため、食材が劣化したり、電気料金が上がったりとデメリットしかありません。
自動霜取り機能がついている冷凍庫であれば問題ありませんが、霜がついてしまった場合は故障を防ぐためにも速やかに霜取りをしましょう。詳しい霜取り方法については、下記の記事で解説しています。
関連記事:冷凍庫の霜取り時短方法!霜がつく原因と防ぐ方法 | 冷凍ラボ
買ってきた食材を冷凍する場合、常温のまま保存すると冷凍庫内の温度が上がってしまう可能性があります。常温の食材を大量に冷凍庫に入れると、庫内の温度が上がり、周りの食材も解けてしまいます。
冷凍庫に常温やチルド製品を入れる場合は、少しずつ入れるのがおすすめです。また、調理したての料理を入れる際は、必ず冷ましてから入れるようにしましょう。できれば冷蔵庫などで冷やし、小分けにして入れるとより庫内の温度上昇を防止できます。
最後に家庭用冷凍庫の温度設定でよくある質問に4つ回答します。普段何気なく使用している家庭用冷凍庫でも「実は使い方が間違っていた…!」という方も少なくありません。
回答を参考に、ぜひ適切に家庭用冷凍庫を使用してみてください。
家庭用冷凍庫の適切な温度は−18℃と決まっていますが、冷凍庫内の温度設定は通年通して同じ設定にしていいわけではありません。冷凍庫の温度設定は、外気温の影響を受けやすく、夏と冬では冷え方が異なります。
使用している家庭用冷凍庫のモデルにもよりますが、通年の温度設定は「中」に設定しておき、気温の高い夏は「強」へ、寒い冬は「低」に変更するとよいでしょう。冷凍庫の温度設定は手動ダイヤルでできるものから、ボタンで温度設定するものまで様々です。
また、冷え方も冷凍庫によって大きく異なるため、詳しい温度調整については取り扱い説明書をご確認ください。
関連記事:冷凍庫の理想的な温度設定は?効率よく冷凍させる3つのウラ技
冷凍庫には寿命があり、故障が近くなると下記のような症状が現れます。
一般的に家庭用冷凍庫(冷蔵庫)の寿命は8〜10年と言われています。使用頻度や機種によって寿命は異なりますが、冷えにくかったり、食材の冷凍ムラができたりすると、故障の前兆であることも。
普段と同じ使い方にもかかわらず、過剰に霜がつく、モーター音のような異音がする場合も、冷凍庫が壊れかかっているかもしれません。
壊れかかったままの冷凍庫を使用すると、庫内の食材が痛み、体調に支障がでてしまう危険性もあるため、早めに修理業者へ連絡するか、買い替えを検討しましょう。
急速冷凍は食材の劣化を遅くするのに有効な方法ですが、家庭用冷凍庫では基本的にできません。家庭用冷凍庫は、もともと家庭で食材を保存する用途として庫内を一定の低温にするよう設計されています。
家庭用冷凍庫 | 急速冷凍庫 | |
冷却方式 | 直冷式が一般的 | ブラインや空気循環式 |
到達温度 | 〜18℃前後 | −20〜−60℃ |
一方、急速冷凍ができる冷凍庫は食材を急激に冷やすようブライン液や空気循環式など、特殊な機能が備わっています。急速冷凍が必要な場合は、業務用冷凍庫のような専用の機能が備わった冷凍庫を使いましょう。
急速冷凍など、より美味しく食材の鮮度を保つには業務用冷凍庫の使用がおすすめです。業務用冷凍庫を一般家庭で利用するメリットは、大容量保存が可能なことでしょう。一般的な家庭用冷凍庫では30〜600L程度が保存目安ですが、業務用なら1500Lと大容量の保存ができます。また、家庭用冷凍庫よりも低温設定ができるため、より長い期間食材の品質を保ったまま保存可能です。
業務用冷凍庫は冷却能力も高いため鮮度を保ったまま保存できますが、注意しなければならない点もあります。
省スペースに設置できる業務用冷凍庫もありますが、一般家庭用冷凍庫と比較すると設置スペースは大きくなりやすいです。また、冷却能力が高い分消費電力も大きく、電気代が高くなるのも注意しなければなりません。
家庭で業務用冷凍庫を使用する場合は、設置スペースや消費電力、冷却温度を確認し、必要に応じた製品を選ぶとよいでしょう。
家庭用冷凍庫の適切な温度は-18℃です。冷凍庫が冷えない場合は、ドアの開閉頻度が高かったり、中身を入れすぎていたりするかもしれません。
また、食材によっては家庭用冷凍庫よりも、業務用冷凍庫のほうが鮮度を保ったまま保存できます。特に赤身魚や赤身肉などは冷凍温度が高いと、変色の原因になります。
ゼロカラが提供している超高速凍結機「ZERO-03」は、ブライン液を使った急速冷凍が可能です。-60℃のブライン液で凍結できるZERO-03は、他社液冷式と比較しても2倍のスピードで凍結できます。
どのくらいの速さで冷凍できるか「テストキッチン」でお試しいただけます。試食をご希望の方は、こちらのメニューよりお選びいただき、事前にご予約をお願いいたします。
この記事を書いた専門家(アドバイザー)
著者情報 ゼロカラ編集部
超高速凍結機、急速凍結機、液体凍結機、ナトリウム除去装置、凍結製造ライン設計の株式会社ゼロカラ
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